遺産分割協議がこじれて10年以上放置されていた相続を、譲渡、売買、贈与を駆使して2年がかりで解決した事例

基本情報
| 被相続人 | 父 |
| 相続人 | 二男、三男、孫(長男の子) |
| 相続財産 | 数億円 |
相談時の状況は?
税理士変更により法人のクライアントとして関与開始したお客様でした。
法人の実態把握のため、土地の抵当権等について調査する中で、約10年前にご逝去されたお父様(前々社長)の相続登記がされずに放置されていることが発覚しました。
長男様(前社長)はお父様のご逝去前に故人となられていることもあり、相続人間で意見がまとまらず遺産分割ができていないため、金融機関が抵当権を設定できず、法人として新規の借入が困難な状況にありました。
このままではお父様が設立され代々受け継いできた法人の存続、発展に支障が及びかねず、お孫様(長男様の子で代襲相続人、現社長)も強い危機感を持たれておりました。
相談への対応
相続人全員が納得できるよう、お父様の遺産分割と合わせて、相続人同士で従前から保有しており複雑に共有持分となっていた法人の株式や自社工場用地、ご自身たちの居住用地を、売買、交換(※)、贈与などを駆使して税務負担が少ない形で分割できるようご提案しました。
また、相続人やその配偶者を一堂に会し、全員にご理解頂けるまで複数回に渡り丁寧に説明を行いました。
※個人が、土地や建物などの固定資産を同じ種類の固定資産と交換したときは、譲渡がなかったものとする特例があり、これを固定資産の交換の特例といいます。
No.3502 土地建物の交換をしたときの特例
参考サイト(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3502.htm
対応による結果
お父様(前々社長)所有の土地の持分をお孫様(現社長)が相続し、また親族間の複雑な共有持分を解消し、法人の株式及び自社工場用地をお孫様(現社長)の単独持分とすることで、経営の健全化、意思決定の迅速化を図ることができました。
また、金融機関からの借入も可能となり、安定して経営を継続できるようになりました。
実態把握に始まり、財産評価、スキームの構築、司法書士の先生との連携に加え、相続人全員の賛同を得るに至るまで、実に二年を要しましたが、最終的には相続人全員の同意のもと円満に遺産分割を完了することができ、お孫様(現社長)からも大変喜んで頂けました。
今回の対応のポイント
今回のケースのように、長期間に渡って相続登記をせずに放置すると、相続人の数が増えて権利関係が複雑になってしまったり、不動産の売却や担保提供をすることもできません。
権利関係が複雑、分割協議がうまくまとまらない、などのお悩みがありましたら、ぜひ一度ご相談ください。
また、不動産トラブルの中で最も多いものの一つが、今回のような不動産の共有です。 相続の度に共有者が増え、共有者間で意見の一致が難しくなり、そのまま放置せざるを得なくなります。 共有者間の意思疎通を図ることができる間に、共有名義を解消しておくことが大切です。
共有名義の解消にはいくつかの方法がありますが、今回の固定資産の交換の特例もその一つです。うまく活用できれば大きなメリットがありますが、税務の専門知識が必要です。弊所では、対象地の不動産評価から、譲渡(交換)額の算出、交換契約書、確定申告書の提出までサポートさせて頂きます。 また、土地の交換登記については提携の司法書士の先生のご紹介も可能です。
なお非上場株式の親族間での分散も不動産の共有と同じ問題を抱えています。
名古屋市中区 笘原拓人税理士事務所 相続税専門チーム


