区分所有の二世帯住宅の小規模宅地等の特例の注意点
基本情報
被相続人 | 父 |
相続人 | 息子 |
相続財産 | 数億円 |
相談時の状況は?
3階建てのご自宅の1・2階に息子様ご家族が、3階にお父様が居住されていました。
土地・建物ともにお父様の名義で、また1・2階と3階に分けて区分所有登記されていました。
息子様は漠然と小規模宅地等の特例を適用し土地の評価額を減額できると思われていたところ、最初に相談した税理士事務所に区分所有登記の建物は小規模宅地等の特例は適用できないと言われ、弊所に適用の可否についてご相談頂きました。
相談への対応
国税庁の定義する特例適用者である「被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に居住していた親族」の一棟の建物が区分所有登記された建物である場合、被相続人の居住部分に居住していた親族でなければ、特例の適用を受けることができません。
よって今回のケースでは、3階のお父様の居住部分は小規模宅地等の特例の適用はできませんでした。
しかし、「被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等」を「被相続人と生計を一にしていた親族」が取得する場合にも、小規模宅地等の特例は適用できます。
生計一親族かどうかというのも様々な論点がありますが、今回は生活費を共に拠出されている等、生計一に該当するものとして、1・2階の長男様ご家族の居住部分について、小規模宅地等の特例の適用が可能と判断しました。
No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
参考サイト(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
対応による結果
通常の土地の評価額58,717千円に対し、小規模宅地等の特例を適用したことにより22,937千円に減額されました。
結果、財産総額が基礎控除額以下となり、相続税は発生しませんでした。
【節税額の詳細】
当初の計算 | 笘原拓人税理士事務所の計算 | |
土地 | 58,717千円 | 22,937千円 |
相続税額 | 4,800千円 | 0円 |
当事務所にご依頼いただいたことで、480万円の節税!
今回の対応のポイント
親と同居している自宅を相続する際、小規模宅地等の特例を使えば、土地の評価額を最大80%下げることができて節税につながります。ただし、同居していたかどうかなど細かな要件があり、難しい制度の一つです。
今回のケースのように区分所有の二世帯住宅の場合、お父様の居住部分は特例の適用を受けられず、生計一親族であっても息子様ご家族の居住部分しか特例の適用を受けることはできません。また、生計一かどうかについて否認されるリスクも残ります。
対策として、生前に区分建物として登記した建物を一棟の建物へと変更する登記手続をしておくことをお勧めします。
名古屋市中区 笘原拓人税理士事務所 相続税専門チーム