絵画の評価は鑑定士 譲渡すると総合譲渡だが譲渡益がでなかった事例

基本情報
| 被相続人 | 母 |
| 相続人 | 子1名 |
| 相続財産 | 数億円(不動産、現預金、美術品等) |
相談時の状況は?
被相続人が亡き夫から相続した絵画・陶器・宝石等が100点以上残されていました。
ご遺族は
「百貨店で相当な高額で購入したと聞いているが、今の価値がわからない」
「これらすべてに相続税がかかるのか」
と不安を抱えていらっしゃいました。
相談への対応
1. 専門鑑定士による「時価」の算出
美術品の相続税評価額は、購入時の価格ではなく「相続開始日の時価」で評価します。
今回は、百貨店価格(小売価格)ではなく、専門業者に依頼して「美術品競売市場(オークション等)」の直近データに基づいた鑑定を行いました。
これにより、購入時よりも大幅に低い、現在の「適正な評価額」での財産計上が可能となりました。
2. 「取得費加算の特例」による税負担の軽減
相続した美術品を相続人が売却した場合、その利益(譲渡益)には所得税がかかります。
今回は、相続税の申告期限の翌日以後3年以内に売却を行うことで、「相続税額のうち一定金額を取得費に上乗せできる特例(取得費加算の特例)」を適用しました。
対応による結果
● 財産圧縮に成功
大半の美術品が購入価格を下回る鑑定額となり、結果として相続税の課税対象額を最小限に抑えることができました。
● 譲渡所得の抑制
今回は約50万円を取得費に加算しました。
取得価額が売却価額を上回っていたため最終的に譲渡益は発生しませんでしたが、特例を適用できる状態にしておくことで、万が一利益が出た際の増税リスクを回避しました。
今回の対応のポイント
美術品の評価額は、購入時の価格ではなく、相続開始日の時価です。購入時には高額でも鑑定士の評価により評価額が大幅に下がることもあります。
「よくわからないから申告しない」、ではなく専門家の力を借りて適正な評価をすることで申告漏れのリスクを防ぐこと、相続後に売却した際には取得費加算の特例を用いて譲渡所得を節税することが可能です。
今回の件は、百貨店でご購入された美術品ということで、鑑定士評価を最初からお願いしましたが、美術品の評価は、専門家でも判断が分かれる非常に繊細な分野です。いきなり高額な鑑定料を払って正式な鑑定書を作成するのは、コスト倒れになるリスクがあります。
「何が価値のあるものか」をご家族が把握していないことが、相続時の混乱や申告漏れの原因となります。
生前に、購入価格や由来を記した一覧表(財産目録)を作成しておくだけでも、相続人の負担は劇的に軽減されます。美術品を多くお持ちの方は、生前からの対策が非常に有効です。
また美術品の購入を鑑賞を目的とするのはご本人の趣味、生活のうるおいになるため問題はありません。
ただ、美術品を相続税の節税に使えるという考えをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、生前の通帳の動きや百貨店の売買記録に残りますので、美術品の購入状況は税務署に把握されます。
そして、鑑定評価の相続税評価額が低いということは市場価格が低いということなので相続人への相続財産を目減りさせてしまう可能性がありますのでご注意ください。
名古屋市中区 笘原拓人税理士事務所 相続税専門チーム


