相続税期限申告はいつ?間に合わないときはどうなる?
投稿日:2022.12.19
相続税の申告期限は、「被相続人の死亡の日(正確には相続の開始があったことを知った日)の翌日から10か月以内」と相続税法で決まっています。正当な理由がない限り申告期限の延長は認められていません。もし、期限内申告ができない場合、相続税の軽減に関する特例を適用できなくなるというデメリットがあり、さらに附帯税等が課せられます。
相続税期限内申告を可能にするには、期限内申告に間に合わない可能性が出てきたときに、適切な対処法を知っているかどうかで決まります。ここでは、実際に考えられる理由をいくつか紹介し、対処法を解説します。ただ、正直に申し上げますと生前の準備と相続開始後の早期の着手が大切です。申告期限に間に合わないことは不利益が大きいので、なるべく早く税理士へ依頼することをお勧めします。
目次
被相続人の死亡した日がいつなのか。正しい相続税の申告期限とは?
相続税の申告を期限内に完了させるには、相続税の申告期限を正しく認識することから始まります。先に述べた通り、申告期限は「その相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内」です。例えば、被相続人が9月1日に亡くなったと仮定します。この場合の申告期限は翌年7月1日です。この期日が土曜・日曜・祝日にあたる場合には、次の平日、つまり翌日7月2日が期限となります。
▼詳しくは国税庁ホームページをご覧ください>>相続税の申告と納税
相続税期限内申告が間に合わない!考えられる要因3つと対処法
相続税の期限内申告が間に合わない理由の多くに、次の3つがあげられます。
1つめは「相続財産の洗い出しに時間がかかる」
2つめは「相続手続きの書類収集に時間がかかる」
3つめは「遺産分割協議が進まない」という理由です。
申告業務を進める中で、これらの理由で申告が間に合わない場合、どのような対処法があるのでしょうか。それぞれの事態が発生する要因とともに、詳しく見ていきましょう。
要因1:相続財産の洗い出しに時間がかかる
相続税の申告には、財産目録の作成が必要です。そのために、被相続人の相続財産の洗い出しをしなければなりません。相続財産は、現金預金や不動産のように「プラスの財産」だけではなく、借入金や未払金など「マイナスの財産」も相続の対象となります。
ここで相続財産が漏れてしまうと、「申告漏れの財産」として修正申告や更正の請求が必要となります。再度の申告が必要とならないよう、念入りな調査が必要です。そこで、財産の洗い出しにかかる時間を短縮するために、事前の準備は大切です。
相続が発生する前の生前中にエンディングノートやエクセルなどで財産の一覧を記載しておく、複数ある金融機関の口座を解約して金融機関を集約しておくなどの対策が必要です。また、遺産整理業務を請け負ってくれる専門家もいます。専門家が熟練していると資料の収集は早いです。
ただし、遺産整理業務の請け負いを専門としていない専門家は通常業務の片手間にやるケースがありますので、逆に相続人がやるより時間がかかるケースもありますのでご注意ください。
要因2:相続手続きの書類収集に時間がかかる
相続手続きに必要な書類はさまざまです。収集に時間がかかる書類として、相続人全員の戸籍謄本や印鑑登録証明書、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本などがあげられます。被相続人や相続人の転籍が多い場合は、戸籍謄本を収集するだけでかなりの時間を要します。これらの書類収集の時間を短縮するための対処法として、専門家の利用をおすすめします。
要因3:遺産分割協議が進まない
遺産分割協議とは、「誰が、どの財産を、どのくらい相続するか」を決めることです。相続人全員で話し合って決めるため時間のかかるケースがあります。時間のかかる遺産分割協議への対処法として、相続税に精通しているコンサルティングができる税理士の力を借りるとスムーズにいくケースもあります。また、生前の対策にはなってしまいますが、遺言書があれば遺言書の通りにスムーズに相続が進みます。
参考>>相続税申告期限とは?期限や間に合わなかった場合の対応法
未分割でも期限内に一旦申告する
本来であれば、申告期限までに遺産分割協議書を完成させてからの申告が望ましいですが、「未分割財産」として申告することもできます。ただし、「未分割財産」として申告する場合、相続税申告の軽減措置が受けられません。(配偶者の税額軽減や小規模宅地等の課税価格の特例などの後の対処法はあります)
そして未分割の財産が分割できた後、確定した分割の割合などに応じて修正申告もしくは更正の請求が必要となります。
相続税申告期限を過ぎた場合のペナルティ3つ
相続税申告期限に間に合わない場合、たとえ期限後申告したとしてもペナルティは発生します。 主なペナルティは ・延滞税の発生 ・無申告による加算税の発生 ・特例や控除が適用不可 の3つです。それぞれの内容について解説します。
ペナルティ1:延滞税の発生
納付期限の翌日から納付した日までの日数に応じて、利息に相当する額が延滞税として課税されます。相続税の納付期限は申告期限と同じです。
ペナルティ2:無申告による加算税が発生
申告期限までに相続税の申告をしなかった場合、無申告加算税が発生します。加算税算定の基準は次の通りです。
- 期限後に自主的に申告した場合・・・追加納付した税額の5%
- 税務調査により無申告が発覚し期限後に申告した場合・・・追加納付した税額の10%~15%
ペナルティ3:特例や控除が適用できない(場合によります。)
特例や控除が適用できるのは、申告期限内に遺産分割が完了している場合です。したがって、遺産分割協議が終わっていない場合は、特例や控除が適用できなくなります。
また、「特例を適用したら納税額がゼロになった」という場合でも申告は必要です。納税額がないから申告する必要がないわけではありません。特例の申告要件といいます。
相続税の申告・納付の延長が認められる場合
相続税の申告と納付の延長は、正当な理由がある場合のみ認められています。「正当な理由」とは次の通りです。
- 新型コロナウイルス感染症の影響により申告できなかった場合
- 災害等を受けた場合
どちらの場合も、相続人が勝手に判断できるものではありません。災害による期限延長は、国税庁が発表した災害に該当している場合のみ「正当な理由」として認められます。
申告と納税の延長が認められるかどうかは「個別対応」となっています。どちらの場合も「災害による申告、納付等の期限延長申請書」の提出し税務署長の承認が必要です。
また、期限延長の個別申請による税務署長の承認を受けていても、申告書の提出日が納付期限となるため注意が必要です。
まとめ
相続税申告書が提出期限に間に合わない場合、正当な理由がある場合を除き、さまざまなペナルティが課せられます。これは法定申告期限に間に合わせる他の納税者との課税の公平を図るためです。正当な理由があれば個別延長を認められますが、正当な理由として対象となるかどうかは税務署が判断します。当然の権利ではありません。
ペナルティの中でも「無申告」が一番厳しいので注意しましょう。未分割の財産があっても未分割のまま一旦申告と納税をするなど、期限内申告ができるよう先に述べたような対処法を参考にし、準備をしておくことが大切です。繰り返しになりますが、申告期限に間に合わないことは不利益が大きいので、なるべく早く税理士へ依頼することをお勧めします。
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