【譲渡所得②】自宅を売却した時の譲渡所得特例とは?実家(空き家)を売却した場合の税金は?

 

相続や住み替えなどをきっかけに、不動産を売却するケースは少なくありません。特に多いご相談が、
● 自宅を売却した場合の税金
● 相続した実家(空き家)を売却した場合の税金
についてです。

不動産を売却して利益が出た場合、その利益には所得税の「譲渡所得」が課税されます。しかし、一定の条件を満たす場合には大きな税金の軽減制度(譲渡所得の特例)を利用できる可能性があります。

 

この記事では、税理士の立場から、
 ・自宅を売却した場合の譲渡所得特例
 ・相続した空き家を売却した場合の特例
 ・譲渡所得の基本的な考え方
について分かりやすく解説します。


不動産を売却すると「譲渡所得」が発生する

まず、不動産売却にかかる税金の基本を確認しておきましょう。
土地や建物を売却して利益が出た場合、その利益は譲渡所得として所得税・住民税の課税対象になります。

 

譲渡所得の計算方法は以下のとおりです。

譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)

 

↓こちらのコラムで詳しく紹介しています。
【譲渡所得①】相続不動産を売却すると確定申告が必要?譲渡所得の基本的な計算方法を解説!

 

自宅を売却した時の特例(居住用財産の特別控除)

相続した不動産が、被相続人(亡くなった方)の自宅(居住用財産)だった場合、売却時に使える特例が存在します。代表的なものを2つご紹介します。

 

3,000万円の居住用財産の特別控除

自宅(マイホーム)を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。これにより、多くのケースで税負担を大幅に軽減することができます。
マイホームの特例ですので、相続人ご本人が居住していることが要件になります。被相続人と生前に同居していたケースです。

【適用の主な要件】

● 売った家屋が、売った人の居住用であること
 (相続の場合は相続人が居住しているか、空き家特例の要件を満たすこと)
● 売った年の前年・前々年にこの特例を使っていないこと
● 売った相手が親族などの特別な関係でないこと
※令和8年3月時点

 

相続した実家をそのまま売却する場合でも、要件を満たせばこの特例を活用できる場合があります。

 

居住用財産の特別控除を用いた例

【前提条件】

◾️ 自分が15年間住んでいたマイホームを売却
◾️ 購入価格:4,000万円(土地2,000万円+建物2,000万円)
◾️ 売却価格:6,500万円
◾️ 譲渡費用(仲介手数料など):200万円
◾️ 所有期間:15年(長期譲渡所得)

 

【特例なしの場合】

項目 金額
譲渡収入 6,500万円
取得費 4,000万円
譲渡費用 200万円
譲渡所得 2,300万円
税率(長期・約20%) 20%
税額(概算) 約460万円

 

【3,000万円特別控除を適用した場合】

項目 金額
譲渡収入 6,500万円
取得費 4,000万円
譲渡費用 200万円
特別控除額 3,000万円
譲渡所得 ▲700万円(=0円)
税額 0円

譲渡所得2,300万円が控除額3,000万円を下回るため、税額は0円になります。
この制度は、住み替えやライフスタイルの変化に対応するために設けられています。

 

【出典】国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm

 

相続空き家の3,000万円特別控除(空き家特例)

 

3,000万円の空き家特例控除

被相続人が一人で居住していた自宅(空き家)を相続し、一定の要件を満たして売却した場合に、譲渡所得から最大3,000万円(令和6年以降、相続人が3人以上の場合)を控除できる特例です。

【適用の主な要件】

● 昭和56年5月31日以前に建築された建物であること(旧耐震基準)
● 相続開始直前まで被相続人が一人で居住していたこと
 (老人ホーム入居の場合も一定の要件で対象)
● 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
● 売却価格が1億円以下であること
※令和8年3月時点

 

特に多いのは、古い実家を解体して土地として売却するケースです。
この場合でも条件を満たせば、3,000万円控除が利用できる可能性があります。

 

空き家特例控除を用いた例

【前提条件】

◾️ 父が1978年(昭和53年)に1,500万円で購入した自宅を相続
◾️ 相続後、誰も住んでおらず空き家状態
◾️ 相続開始から2年後に4,000万円で売却
◾️ 仲介手数料などの譲渡費用:130万円
◾️ 相続人は自分1人

 

【特例なしの場合】

項目 金額
譲渡収入 4,000万円
取得費(父の購入価格) 1,500万円
譲渡費用 130万円
譲渡所得 2,370万円
所有期間(父からの引継ぎ:約47年) 長期譲渡所得 約20%
税額(概算) 約474万円

 

【空き家特例を適用した場合】

項目 金額
譲渡収入 4,000万円
取得費 1,500万円
譲渡費用 130万円
特別控除額 3,000万円
譲渡所得 ▲630万円(=0円)
税額 0円

この空き家特例は、活用できれば非常に有効ですが、要件が細かく、適用できるかどうかの判断が難しいケースも多々あります。
売却前に必ず税理士へご確認ください。

 

【出典】国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm

 

相続不動産の売却は事前の税務検討が必要

相続した不動産の売却では、
● 譲渡所得税
● 相続税
● 特例制度
など、複数の税金が関係します。 特例を利用できるかどうかによって、税額が数百万円変わるケースも珍しくありません。

 

特に、
➡︎ 自宅売却の3,000万円控除
➡︎ 空き家特例
➡︎ 取得費加算の特例
などは、適用条件を正確に確認する必要があります。

 

特例を使っても「譲渡所得ゼロ」の場合でも、確定申告が必要です。

申告しないと特例が適用されないため、売却後は必ず翌年3月15日までに申告手続きを行いましょう。
また、要件の判定は細かく、特に「一人居住」や「耐震改修・取壊し」の条件は見落としやすいため、売却前に税理士へのご相談をおすすめします。

 

まとめ(税理士・笘原拓人より)

様々な特例に関して、今後のコラムで詳しく発信していきます。

不動産を売却する際、「売却価格」ばかりに目が向きがちですが、実際には税金の影響も非常に大きいものです。
特に相続不動産の場合は、
・相続税
・相続税
・譲渡所得税
・特例制度
が複雑に関係します。

 

売却してから相談すると、利用できる特例が限られてしまうこともあります。
そのため、不動産の売却を検討している場合は、売却前の段階で税務を確認することが重要です。売却した後でもどうしようもないことも多いです。
適切に制度を活用することで、不要な税負担を防ぐことができます。

 

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