【税理士監修】金の相続税はいくら?金の種類別評価方法と税金対策5つのポイント

 

「実家を整理していたら金の延べ棒が出てきた」
「亡くなった親が純金積立をしていたらしいが、どう扱えばいいのか分からない」
相続の現場では、こうしたご相談を年々多くいただくようになりました。

 

近年、金相場は歴史的な高値水準で推移しており、資産防衛の手段として金を保有する方が増えています。しかしその一方で、「現金や不動産と違って金には税金がかからないのでは?」「自宅の金庫にしまっておけば申告しなくても分からないのでは?」といった誤解も少なくありません。

 

結論から申し上げると、金は相続税の課税対象です。金地金(インゴット)、金貨、宝飾品、純金積立、金ETFなど、形態を問わず経済的価値のあるものはすべて相続財産として評価し、申告する必要があります。申告を怠れば、後日税務調査で発覚し、本来の税額に加えて重いペナルティが課されるリスクもあります。

 

本記事では、税理士の視点から、金の相続税評価の仕組み、種類ごとの具体的な評価方法、生前からできる税金対策、そして申告時の注意点まで、体系的に解説します。

 

 

金は相続税の課税対象になる(結論と基本ルール)

 

金は相続税の課税対象になる

相続税は、亡くなった方(被相続人)が所有していたすべての財産に対して課される税金です。現金や預貯金、不動産、有価証券だけでなく、金銭的に見積もることができる財産はすべて相続税の対象になります。これは相続税法第2条に定められた基本原則であり、金・プラチナ・宝飾品といった貴金属もこの「金銭に見積もることができる財産」に含まれます。
つまり、以下のような形で金を保有していた場合、いずれも相続財産として申告が必要です。

 

【金銭に見積もることができる財産】
・金地金(インゴット・金の延べ棒・ゴールドバー)
・金貨(地金型金貨、日本政府発行の記念金貨、海外のアンティークコインなど)
・純金積立
・金を用いた宝飾品(ジュエリー)・美術品
・金製の仏具・仏像・置物など
・金ETF・金関連の投資信託


「現物として自宅の金庫にある」「証券会社の口座で純金積立をしている」など、保有形態を問わず、すべてが対象になる点をまず押さえておきましょう。

 

相続税がかかるかどうかは「基礎控除額」で決まる

「金を含めた相続財産の合計額が、必ずしもそのまま課税されるわけではありません。相続税には基礎控除という非課税枠があり、遺産総額がこの基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。

◾️ 基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

たとえば法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人であれば、基礎控除額は「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」となります。金の評価額を含めた遺産総額がこの金額を超えた場合に、超えた部分に対して相続税がかかる仕組みです。

 

金相場が上昇している近年は、「昔は大した価値がないと思っていた金が、想定以上に高額な評価になり、結果的に基礎控除を超えてしまった」というケースも珍しくありません。金を保有している方の相続では、この評価額の算出が非常に重要な意味を持ちます。

【関連コラム】

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金の相続税評価方法を種類別に解説

 

相続財産の評価基準は、国税庁の「財産評価基本通達」にまとめられていますが、実は同通達には「金」や「金地金」という項目が個別には設けられていません。そのため、原則として「一般動産」として評価することになります。一般動産は「売買実例価額」「精通者意見価格」などを参考に、相続開始時点(被相続人が亡くなった日)の時価で評価するのが基本です。

 

とはいえ、実務上は金の種類によって評価の考え方が異なります。代表的なパターンを整理します。

 

1.金地金(インゴット・金の延べ棒・ゴールドバー)

もっとも標準的な評価方法です。相続開始日(被相続人が亡くなった日)の「業者買取価格」×保有重量(g)で評価額を算出します。

 

田中貴金属工業や三菱マテリアルなど、金地金を扱う大手業者は1gあたりの買取価格を日々公表しているため、亡くなった日の買取価格を確認し、保有重量を掛け合わせれば評価額が求められます。田中貴金属のFAQでも、相続の場合は「被相続人が死亡した日の時価(店頭買取価格)」で評価する旨が明記されています。

 

なお、金地金に特定の販売業者名が刻印されていても、必ずその業者の相場を採用しなければならないという決まりはなく、任意の業者の公表価格を用いて差し支えありません。ただし、後日の税務調査に備え、根拠となった価格の出典(業者名・確認日・URLなど)は記録として残しておくことをおすすめします。

 

2. 金貨

金貨は「地金としての性質が強いもの」と「貨幣・骨董品としての性質が強いもの」で評価方法が分かれます。

【地金型金貨(クルーガーランド金貨、メイプルリーフ金貨など)】
金そのものの価値で評価するため、金地金と同様に「時価(1gあたりの価格)×重量」で計算します。額面は存在しないか、あっても実質的な意味を持ちません。

【日本政府発行の記念金貨(天皇陛下御在位60年記念10万円金貨など)】
貨幣として法定通用力を持つため、従来は額面金額(10万円など)で評価するのが実務上の慣行でした。しかし近年の金相場高騰により、金としての実質価値が額面を上回るケースが増えており、額面評価だけでは適正な評価とはいえない可能性が指摘されています。額面と時価のいずれで評価すべきか判断に迷う場合は、相続税専門の税理士に相談することを強くおすすめします。

【骨董的価値のあるアンティークコイン】
金としての価値ではなく「骨董品としての時価」で評価します。売買実例価格(同種のものの取引実績や買取業者の提示価格)を基本とし、実例がない場合は精通者(鑑定士など)の意見価格を用います。

 

3. 宝飾品(ジュエリー)・美術品・金製仏具

宝飾品や美術品としての金製品は、業者の買取見積価格や鑑定士による鑑定価格をもとに評価します。ただし、1個または1組あたりの評価額が5万円以下であれば、個別に評価する必要はなく、「家財一式」としてまとめて計上することが認められています(財産評価基本通達128)。

【出典】国税庁「第1節 一般動産」財産評価基本通達128
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/06/01.htm

ここで気をつけたいのが、「金の仏具を購入すれば相続税対策になる」という話です。相続税法上、日常礼拝の対象となる祭具(仏壇・仏具・神棚など)は非課税財産とされています。しかし国税庁の見解では、投資対象や商品として所有しているもの、骨董的価値があるものは非課税の対象外とされています。

 

相続直前に「節税目的」で購入した高額な純金仏像などは、実質的に投資対象とみなされ非課税と認められない可能性が高い点に注意が必要です。また、金の仏具は加工代金が上乗せされて販売されているため、たとえ非課税と認められたとしても、資産価値としては目減りしているケースが多く、対策としての実効性には疑問が残ります。

4.純金積立

金融機関や貴金属会社と契約して毎月一定額を積み立てる「純金積立」も相続財産に含まれます。評価額は、サービスを提供している金融機関・業者に積立数量の分かる資料を発行してもらい、金地金と同様に相続開始日(被相続人が亡くなった日)の「業者買取価格」をかけ合わせて算出します。

5. 金ETF・投資信託

証券口座で保有する金ETFや金関連の投資信託は、金そのものではなく「有価証券」として評価します。上場投資信託であれば、相続開始日の最終価格などをもとに、上場株式に準じた評価方法を用いるのが一般的です。証券会社発行の残高証明書を取得して評価額を確認しましょう。

 

金の評価額を調べる具体的な手順

実務上は、以下の3ステップで評価額を確定させていくとスムーズです。

 

保有形態と重量を確認する

現物の金地金であれば刻印から重量・純度を確認し、証書や購入時の領収書があれば保管しておきます。

 

相続開始日(死亡日)の買取価格を確認する

金の買取価格はほぼ毎日変動するため、インターネット上の価格情報だけに頼るのはリスクがあります。過去の価格は公開されていないことも多いため、買取業者に直接電話やメールで問い合わせて、死亡日時点の価格を確認するのが確実です。

 

評価額を計算し、根拠資料とともに保管する

計算根拠(業者名、確認日、価格、重量)を記録に残し、相続税申告書に添付する資料として整えておきます。

◾️ 計算例
1kg(1,000g)の金地金を保有しており、相続開始日の業者買取価格が1gあたり15,000円だった場合
15,000円 × 1,000g = 1,500万円が相続税評価額となります。

金相場は数年単位で見ると大きく変動するため、「以前調べたときの評価額」をそのまま使うことはできません。必ず相続開始日時点の価格で評価し直す必要がある点に留意してください。

 

金を相続した場合の税金対策・節税の5つのポイント

金そのものに使える節税策は限られていますが、他の相続対策と組み合わせることで、税負担を抑えられる可能性があります。

 

POINT 1:生前贈与を活用する(年間110万円までは贈与税がかからない)

暦年贈与の非課税枠(受贈者1人あたり年間110万円)を活用し、生前に少しずつ金を贈与しておく方法があります。
金の評価額は変動するため、価格が比較的落ち着いている時期に計画的に贈与することで、将来の評価額上昇リスクを回避できる可能性があります。
ただし、相続開始前の一定期間内に行われた贈与は相続財産に加算して相続税を計算する「生前贈与加算」のルールがあり、この対象期間は税制改正により段階的に延長されています。制度の詳細や適用時期は改正の影響を受けやすい分野のため、実行前に必ず税理士へ確認することをおすすめします。

POINT 2:相続時精算課税制度の活用を検討する

一定の要件を満たす場合、相続時精算課税制度を利用して生前に贈与しておく方法もあります。この制度には基礎控除が設けられており、少額の贈与であれば贈与税がかからずに財産を移転できる場合があります。

 

POINT 3:節税目的だけの「金の仏具購入」は避ける

前述のとおり、投資目的・商品としての性質が強い金の仏具は非課税財産と認められない可能性が高く、加工費の上乗せ分だけ資産価値も目減りします。「非課税財産だから」という理由だけで購入するのは、税務上のリスクと資産効率の両面からおすすめできません。

 

POINT 4:売却タイミングを考慮した遺産分割を検討する

金は相続後に売却して納税資金に充てることも可能な資産です。
ただし売却すれば譲渡所得税がかかるため(後述)、「誰が相続し、いつ売却するか」によって税負担のトータルが変わってきます。他の相続財産(不動産・預貯金など)とのバランスを見ながら、遺産分割協議の段階で検討しておくとよいでしょう。

 

POINT 5:専門家による事前シミュレーションを行う

金相場は日々変動するため、「今の評価額なら基礎控除内に収まる」と思っていても、相続発生時には評価額が大きく変わっている可能性があります。生前から定期的に資産全体を棚卸しし、相続税専門の税理士によるシミュレーションを受けておくことで、想定外の税負担を防ぐことができます。

 

金の相続で注意すること

 

こんな点に注意!

「自宅の金庫に保管している金は、申告しなければ税務署に分からないのでは」と考える方がいますが、これは非常に危険な考え方です。実際には、以下のような仕組みにより、金の保有・売却は税務署に把握される可能性が高くなっています。

【支払調書制度】
貴金属業者が個人から金地金等を1回200万円を超えて買い取った場合、業者は「金地金等の譲渡の対価の支払調書」を税務署に提出する義務があります(所得税法第225条第1項第14号、平成24年1月1日以降)。
相続人が金を売却した際にこの調書が提出されれば、その情報は税務署に把握されます。

【税務調査における預貯金・取引履歴の確認】
税務署は被相続人・相続人の預貯金の入出金履歴やクレジット利用明細等を調査する権限を持っています。金の購入・売却に伴う入出金があれば、そこから保有が発覚することがあります。

【国税局による重点調査】
国税庁の統計でも、金地金等の譲渡所得に関する申告漏れは繰り返し指摘されており、金価格が高値水準にある局面では特に重点的な調査対象となっています。
金地金にはシリアルナンバーが付いています。このシリアルナンバーに購入者情報が紐付けされているため、相続税申告をする際に金を隠しても税務調査が入ります。

申告漏れが発覚した場合、本来の相続税額に加えて、無申告加算税(納税額に応じて15〜20%程度)や、悪質と判断された場合には重加算税、さらに延滞税(納期限からの経過期間に応じて年7.3%〜14.6%程度)が課される可能性があります。
金は「見つかりにくい資産」ではなく、「他の資産以上に取引記録が残りやすい資産」であると理解し、正確に申告することが結果的に最も税負担を抑える方法です。

 

金を相続後に売却した場合の税金

相続税の申告・納税を終えたあと、相続した金を売却する場合には、別途「譲渡所得税」がかかる点にも注意が必要です。

「相続で取得した金の場合、取得費は原則として被相続人の取得費を引き継ぐため、購入時の領収書等が残っていれば取得費として計上できます(不明な場合は概算取得費の適用可否を税理士に確認しましょう)。」

 

【相続した金を売却する場合】
・金地金や金貨の売却益は、原則として総合課税の譲渡所得として扱われ、給与所得など他の所得と合算した累進税率で課税される
・売却益(売却額-取得費-売却費用)から年間50万円の特別控除を差し引いた金額が課税対象です。保有期間が5年以下なら短期、5年超なら長期となり、長期の場合はこの課税対象が1/2に軽減されます。
相続で取得した金の場合、取得費は原則として被相続人の取得費を引き継ぐため、購入時の領収書等が残っていれば取得費として計上できます(不明な場合は概算取得費の適用可否を税理士に確認しましょう)。
・金ETFなど「金融類似商品」に該当するものは、上場株式等に該当します。したがって譲渡益は上場株式等に係る譲渡所得等として申告分離課税20.315%となります。


相続税の申告だけで終わらせず、「相続後にいつ・どのように売却するか」まで見据えて対策を立てることが、トータルでの税負担軽減につながります。

 

金の相続や売却でよくある質問

Q1. 金の指輪やネックレスなど、少量の金製品にも相続税はかかりますか?

A. かかります。ただし、1個または1組あたりの評価額が5万円以下であれば、個別評価は不要で「家財一式」としてまとめて計上できます。高額な貴金属アクセサリーやブランドジュエリーは個別評価が必要になる場合があるため注意しましょう。

Q2. 金の評価額はいつの時点の価格を使えばよいですか?

A. 相続税評価では、原則として被相続人が亡くなった日(相続開始日)時点の業者買取価格を用います。申告書作成時点の価格ではない点にご注意ください。

Q3. 海外の金貨や外国製のインゴットも相続税の対象になりますか?

A. なります。被相続人が所有していた財産であれば、国内・国外を問わず原則として相続税の課税対象です。

Q4. 金を売って現金化してから申告すれば、相続税はかからずに済みますか?

A. かかります。相続税は相続開始日時点で被相続人が保有していた財産の種類・数量をもとに評価するため、その後売却したかどうかは相続税の課税判定に影響しません。むしろ売却時には別途譲渡所得税が発生する可能性があります。

Q5. 相続税の申告が必要かどうか自分では判断できません。どうすればよいですか?

A. 遺産総額の集計や評価額の算出は専門的な判断を要する場面が多いため、早めに相続税専門の税理士へ相談することをおすすめします。特に金は評価方法が種類によって異なり、相場変動の影響も大きいため、専門家によるチェックが安心です。

 

まとめ

金の相続税評価は、相場の変動や種類ごとの評価方法の違いにより、想定より複雑になりがちです。

本コラムでお伝えしたポイントをあらためて整理すると、次のとおりです。

● 金地金・金貨・宝飾品・純金積立・金ETFなど、形態を問わず金は相続税の課税対象となる
● 遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えなければ相続税はかからない
● 評価方法は種類によって異なり、金地金は「相続開始日の業者買取価格×重量」が基本、金貨や骨董品は性質に応じて評価方法が変わる
● 「金の仏具購入」による節税は非課税と認められないリスクがあり、実効性に乏しい対策
● 200万円超の売却に対する支払調書制度や税務署による資金調査により、金の保有・売却は把握されやすく、申告漏れには重いペナルティが伴う
● 相続後に売却する場合は譲渡所得税も発生するため、相続税だけでなく売却時の税負担まで見据えた対策が重要

 

「うちの金にどれくらい税金がかかるのか分からない」「評価額の算出方法に自信が持てない」
という方は、無申告や過少申告のリスクを避けるためにも、早めに相続税専門の当所へぜひご相談ください。

 

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